存在してないもの

在るようなないような雑記帳

「うつ病九段」(先崎学)

 先崎学九段がうつ病で休場していた時のことを綴った本。うつを発症したときのことから、入院、治療、退院、復帰までのことが具体的に記されている。非常に読みやすく、闘病の様子がよくわかるのだが、これを書きか始めたきっかけがうつ病のリハビリのためだというのだから驚きだ。当時の記憶が鮮明に残っているような文章で、うつ病の治りかけの人が書いたとは思えない。うつ病について、精神科医が書いた本はたくさんあるけど、患者本人が書いた本はほとんどないと思うので、その意味では珍しい本なのかもしれない。

先崎さんがうつ病だなんて予想もできなかったが、将棋界が大問題で揺れていた時期に、自分が関わった漫画が映画化されるとなってプレッシャーがあったのかもしれない。読んでいてうつ病について初めて知ることがいくつかあった。うつ病は死に向かう病気だということ。うつ病は脳の病気だということ(プロ棋士にとっては大問題!)。心の病気と言われることもあるが、脳の病気と言ったほうが医学的に治療可能であることが明確な気がして、いいと思った。先崎さんの人望が厚いこともよく分かった。鈴木さん、中村さんをはじめ多くの棋士女流棋士に慕われていて、また先崎さん自身も彼らを信頼している。本文中で羽生さんのことを「羽生」と呼び捨てで書いているのはすごいと思った。そんな先崎九段は先日復帰後初白星を挙げられた。先手の先崎九段の攻めが華麗に決まり、57手という短手数での決着だった。

この本を読んでいて、私も軽いうつ病なのでは?と思ってしまった。頭の中にもやがかかっているように感じるし、物事を悪いほうに考えてしまう。物事にあまり関心を持てないというのもある。気になるので軽いうつ病に関する本も読んでみよう。