存在してないもの

在るようなないような雑記帳

「日日是好日」(森下典子)

森下さんがお茶のお稽古に通って感じたことや学んだことを体験談としてまとめた本。お茶といってもただお茶を点てればよいというわけではなく、お点前という細かい手順や作法が決められているようだ。稽古ではそれを繰り返し練習する。最初は所作にどういう意味があるのかわからず、先生も教えてくれない。それに季節によってお点前が変わるため、ひとつを覚えればよいというわけではない。それがなかなか大変なようで、何年習っていても間違えてしまうのだという。それでも続けていくうちに余裕ができて、季節の変化、水やお湯を注ぐ音、雨のにおいなどの小さなことに気づけるようになる。

私が印象に残ったのは自分で気づくということ。お茶の先生は所作の意味や日々の小さな変化を知っているのだけれどそれを言わない。生徒は何年もかけてそれに気づく。無駄なようだけど自分で見つけることで感動するし、腹に落ちる。

仕事をしていると分からないところは聞いてしまうことが多い。自力で分かろうが他人に教えてもらおうが、理解してしまえば同じだと思うから。ただ、他人に教えてもらうと納得感が少ないときもある。表面的にしか理解できてない。自分で考え抜いて分かると、本質が見えて腹に落ちる。自分の言葉で説明できるようになる。いつもそうやって自分で気づければいいのだが、仕事ではスピードが大事なので聞かないと仕方ないことのほうが多い。どうやらお茶はビジネスの対極にあるようだ。